新卒2年目マーケの行く末

社会人2年目。140字じゃおさまらない思いつきを書きます。

「キングダム」の王翦将軍は至高のマーケターである

※47巻以降のネタバレあり 

ご存知の通り、日本には「キングダム」という世界で最も面白い漫画があります。そこでよくオタ友と「一番誰が好き?」という話になるんですが、「憧れ」という意味では僕は断トツで「信」王翦」将軍です(断トツといいながら二人だけど)。 

まず「信」は「キングダム」の主人公なわけですが、「天下の大将軍になるのは、この俺だ!」と愚直に武功をあげまくる姿は、会社の残業やら様々な理不尽に押しつぶされそうになりながらも、「いつかは一流のマーケターになりたい…!」と夢想する私にとって憧れの存在であり、「目の前のこの仕事で、自分も武功をあげるんだ…!」と心を震わせてくれる、僕の心のメンターです。

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天下の大将軍になる夢をことあるごとに叫ぶ信

二人目が、秦軍が誇る知略の将軍、王翦です。見た目はマスクとかしてて結構ヤバいんですが、これがだんだん「かっこよすぎる」「俺もこのお面かぶりたい」となるから不思議です。

「信」がマインド面での心の支えだとしたら、彼はマーケターとしての「スキル」面でのメンターです。 

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いつか偉くなって、「絶対にうまくいく施策以外興味はない」とか言ってみてー!

彼は「キングダム」52巻までの間で数々の知略で活躍してくれるのですが、その戦術眼や相手の手を先まで見通す力など、マーケターとして見習うべき点はごまんとあるのですが、特に私が衝撃的で膝を打ったエピソードがあります(ここからネタバレ)。

それが、鄴攻めです(47~48巻)。※鄴は宿敵 趙国、第二の都市

まだこの鄴攻め、52巻時点で終結していませんが、とにかくこの47~48巻でとった最初の一手がすごかった。

 

■そもそも「戦略」とは

と、その戦略を紹介する前に、まず「戦略とは何か」を確認します(ここからマーケティングよりの話)。

『なぜ「戦略」で差がつくのか。(音部大輔著)』によると、戦略とは「目的達成のための資源利用の指針」であると。

これは本のロジックというより私の解釈ですが、戦略が必要になる場面というのは、達成したい目的と現状にギャップがあり、「じゃあそのギャップをどうクリアしようか」という場面。つまり、必ず達成したい目的がある。だけれども、持っている資源には限りがある(限りがなければ、戦略はいらない)。「じゃあ、この資源をこうやりくりして、こうやって目的を達成しよう」という指針のが、戦略です。

そして戦略を語る上で、この本、もといこの著者(実は今の会社の入社時の最終面接官がこの人)の強調ポイントは、「いかに有効かつ人が(競合が)気付かない資源を見つけられるか」です。

 

■資源の4分類

「いかに有効かつ人が(競合が)気付かない資源」とはどういうことか。その前に、同著によると資源は4分類あるといいます。 以下引用。

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※画像は手持ちの本からパシャリ

①内部資源...組織内で保有している資源で、随時利用可能なもの。一番最初に思いつくいわゆる「資源」。
例:人材、ブランド、製品、技術、資金、営業力、時間、知識、流通、過去の施策etc.

②外部資源…自社外にある資源。ビジネスパートナーなど。
例:代理店、メディア媒体、提携先etc.

そして、ここからがミソ。

③内部資源になりそうなもの(=認識しにくい内部資源)...一般的には資源と認識されないけれども、見方を変えたり環境を整えたりすることで、立派な資源になるもの。たとえるなら、冷蔵庫のあまりもので料理を作ること(生ごみ候補⇒料理の食材=資源)。

これの例が、リプトンのティーバッグです。

リプトンのティーバッグにはホチキスがありません。これは当初、戦略的な意図がなかったものの、「ホチキスがないってことは電子レンジに入れられる⇒ミルクにティーバッグを入れてレンジでチンすれば、簡単にロイヤルミルクティーが作れる」という競合にはない強みをもたらしました。誰も目をつけなかった、認識しにくい内部資源の着目の好例です。

④外部資源になりそうなもの
例:政府、業界団体、ユーザー(インフルエンサー、ブランドのファン)、競合の動向(3位企業が1位企業の訴求に同調する、など)

 

とくに、この③、④は「この人がいなかったらわが社はこれを資源と認識しなかった」「競合にも認識されていない強み=差別化要因になりやすい」という性質上、強いマーケターにはこれが求められるそう。

最終面接後に聞いた話ですが、「一人分の給料で、人の十倍の資源を見つける視点を持ってる人材って、会社的にはお得でしょ」とも著者は言っていました。なるほど!

 

鄴攻めの概要(ざっくり)

やっと本題に戻ります笑。鄴攻めの概要をざっくり整理すると、

①A:黒羊を目指すと見せかけて、敵国「趙」の王都圏に侵入、鄴を攻め落とす! 

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鄴攻め概要①

②(下図参照)より詳しく言うと、趙国の「蓋」こと、C:列尾を落とし、自国(秦国)の城とする。そこから兵站(食料)を補給し続け、D:鄴に攻め入るという作戦。結果、秦軍は、C:列尾城の陥落に成功。

しかし!C:列尾城は、趙国が後々奪還しやすいために、意図的に弱く作られていた!趙国の作戦は、「C:列尾城を奪還し、出口をしめたあと、Eから降りてきた援軍で、C~D~E内に入り込んできた秦国をじっくり、兵糧が尽きるのを待ちながら滅ぼす」という、驚異の作戦。秦軍、絶体絶命!

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鄴攻め概要②

この状況に気付いてしまった天才蒙恬

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Oh, No...

その蒙恬君をザコ扱いする桓騎様

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実際桓騎将軍の言う通り、王翦将軍はC:列尾を兵站用の城として維持するのをやめ(城を捨て)、全軍で目標であるE:鄴を攻め落とせるか、自らの足で確かめに行きます。

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その結果、

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そりゃ部下もビビる

そして王翦将軍、悩んだ挙句ちょっと一人にさせてほしかったらしく、部下に無茶ぶりをします。

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地図を出せ…ん?

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このツッコミ大好き

敵も結構いるんだけど…

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この信頼関係、かっくいい…

この無茶ぶりが奏功し(?)、王翦将軍は鄴城を目の前にし、その場で一つの戦略を導き出します。

 

認識しにくい資源に目を付けた至高の戦略

戦略に行く前に、ここで秦軍の目的と資源を整理すると、

秦軍の目的:鄴を落としたい!(その結果、趙の首都「邯鄲」を落としたい!その結果、中華統一をしたい!)

ここですぐに思いつく、使える資源はというと、

〇14万8千人の軍とそれを束ねる将校
〇それを賄う数十日分の兵糧…

すぐに思いつくのはこれぐらいでしょうか。ちなみにこれらはすべて、内部資源です。

ここで王翦将軍は意識的にしろ無意識的にしろ、ほかにどんな資源が使えるか、考えたのだと思います。そこでひとつの「資源」に目を付けた。それが、そこらへんの小城に住んでる民衆です。んんん?なぜ?

いち早く鄴に攻め入らなければならないのに、王翦将軍は通り道の小さい城(9つ)に寄り道しまくり、わざわざこれらを落としに行きます。

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確かに信じがたい

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なぜ小城を襲い、かつ民衆に手出しをさせず、全員の命を救ったのか?

小城を襲ったのは兵糧を奪うため?民衆を傷つけなかったのは、正義のため?

違いました。それは、難民を発生させるためでした。

f:id:aguyenro:20190103164908p:plain結果、難民はみな東へ東へと逃げていきます。

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その難民達の行先はというと…?そこは秦軍の目的地、鄴でした。結果、鄴の城内には人が溢れます。

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ちなみに年始の成田山新勝寺はこんな感じでした

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どういうことか。まず王翦将軍は鄴城を実際に見に行き、正攻法では攻め落とせないと踏み、目的を達成するための別の戦略を考えた。

そしてその戦略を考える際、見落としがちな、使える資源がないかも(恐らく無意識的に)考えた。

その結果、列尾城(C)~鄴城(D)にある小城9つに住む住民達が使えることを見出し(④認識しにくい外部資源の発見)、彼らを難民とし、鄴城に「詰め込み」、趙国に兵糧合戦を持ち込んだ。

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どうです、天才すぎやしませんか…。他にも、王翦将軍は③内部資源になりそうなもの探しの一環で、他国の優秀な将校を戦中にもかかわらず、すぐ登用しようとしたり、軍内で育ちつつある若い優秀な目を見逃さずに、適材適所に配置し、彼らを育てます。

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姜燕を登用しようとする王翦将軍

資源の③、④の発見が優秀なマーケターには求められる…がゆえに、この「王翦」将軍の「見えない資源の発見」にはしびれてやまないのです…。

※52巻まで読んだ方の中には、この兵糧攻めにツッコミを入れたくなる気持ちもわかりますが、私は「このときの視野と発想のクリエイティブさすごすぎない!?」という点が言いたいのです。

※余談ですが、孫氏の兵法で有名な孫武も、「百戦百勝は最上とは言えない。戦わずして相手を屈服させることが最上なのである」「①最高の戦略は謀略によって勝つこと、②これに次ぐのは外交手段で屈服させること、③その次は強大な軍事力で圧倒すること、④最低の策は、敵の城塁を攻めること」と言っています。この難民を使った兵糧攻めも、言わずもがな…。

 

あぁ、つくづくキングダムって、神漫画だなぁ…。原先生すごい…。

僕がコピーライターを目指すことをやめ、事業会社のマーケターを選んだ理由

長くなったのでタイトルの答えを最初に言うと、「広告はクライアントが9割だから」です。

 

■まず、名古屋市にガッカリ

先日、名古屋市が公募した「名古屋の魅力向上・発信のキャッチコピー」の結果が発表されました。

名古屋市:名古屋の魅力向上・発信のキャッチコピーが決定しました!(観光・イベント情報)

正直、心の底からガッカリ。

最優秀賞の「名古屋なんて、だいすき」はまだいいと思うけど、

「Good morning! NAGOYA」

「いいね、名古屋」

「This is Nagoya Standard !」

「good time nagoya」

「Shall we nagoya?」とか、全然意味が分からないものが多すぎる(とくに英語系)。3,386作品もある中から、これを選ぶかね?※詳しくは、上のリンクから見てみてください

公募のお題(オリエン)には、こうあります。

「名古屋魅力向上・発信戦略を推進していくために、市民をはじめ多くの人が、名古屋を楽しみ、名古屋の魅力を市内外にPRするための合言葉となるキャッチコピー」

このオリエンも正直わかりにくいですが、かみ砕くと「市民をはじめ市内外の人が、名古屋の魅力を発信したくなるコピー」ということでしょうか。

そんなところで、「Shall we nagoya?」とか言われても、大半の人の脳内に「?」が浮かぶだけで、誰も「名古屋って実はめちゃいいんだからね!」とか話したくならないし、これを見せてどういう結果を狙っているのかもさっぱりわからない…。

これ以外にも、ここに挙げたようなコピーを見て、はたしてどれだけの名古屋市民やその他の人が、「名古屋の魅力を発信したくなる」のか、僕には正直わからなかったです。

このコンペ(?)の改善点は後で挙げるとして、ここで僕が言いたいのは「クライアントのコピーを選ぶ目(=選球眼)」についてです。※ここでは審査員がクライアントの役割

もう少し詳しく説明すると、コピーの選球眼とは、「コピーが課題解決に有効に働くか、客観的に判断できる能力」のことです。

本当に正確に「有効に働くか」を判断するには、たとえば実際にそれぞれのコピーを見た人が、その後名古屋の魅力について話すかトラッキングしたり、ネットでの反応を見ないとわからないですが、そんなA/Bテストはなかなかできません(その意味で、ネット広告ってすごいと思う)。

しかし、自身が長年コピーライターとしてヒットも凡打も経験し、有効に働くか判断できる目を養ってきた人は、A/Bテストをしなくても、ある程度、一般の人よりはるかに高い確度で「利くコピー」を判断することができます(必ずしも百発百中ではないですが)。

しかし、審査員の経歴を見てみると、愛知県内の教授、NPOの方、タレントさん…などなど、少なくとも10人中5人はコピーと無縁そうな生業の人たち(他にも、プランナーや宣伝会議の編集長はいるが、コピーライターの人はおらず、専門の人いなさそう)。

これでは、とても名古屋市民をはじめとしたターゲットに刺さるコピーか判断できるコミッティー」とは言えないと思います。僕は審査員が悪いのではなく、あくまでこのコンペを企画し審査員を選定・招聘した人の、「コピーは選球眼が重要」ということの理解不足に、原因があると思ってます。

(余談)改善の余地があるとすれば、審査員賞をなくしてすべて合議制にするとか、コピーライターを一人でも審査員にいれイニシアチブをとってもらう、コピーライターがまずスクリーニングをかけ、残った10個を市民に投票してもらう、などが考えられると思いますが…理由は長くなるので割愛します。

 

■企業間でも横行している「残念な意思決定者たち」

前置きが長くなってしまいましたが、これは日本の広告会社-クライアント間の縮図だと僕は思いました。

広告業界において、サントリーをクライアントとして担当できることは非常に光栄なこと」というのを聞いたことがあります。

たしかに、広告の歴史を見ても、「言葉のサントリー」という言葉があったように、広告賞をとった、数々の素晴らしい広告を生んでいます。

でも、実際にその広告を作っていた人は?というと、外部の広告代理店の人であり、宣伝部の人が「これはいい」「これはダメだ」とディレクションし、決済の意思決定権を持ってきました。

つまり、今でもほとんどの会社では同じように「外の人が作り」「中の人が良いか悪いか判断する」という構造を持っているにもかかわらず、広告が機能する会社・機能しない会社の2種類が存在します。

しかも、日本のように二大大手広告代理店が存在している(=日系大企業の多くがDかHに依頼している)にもかかわらず、広告の良しあしが出るのは、代理店(外の人)間のクリエイティブ力の差というよりも、クライアント(中の人)の選球眼の欠如に原因があるのではないでしょうか。

 

宣伝会議賞の「協賛企業賞」から見るガッカリ

同じことを言うために、もうひとつ例を話させてください。先日、宣伝会議賞というキャッチコピーのコンペがあり、合計46万本ものコピーが集まりました。

で、そこから数十人のコピーライターが分担して4600本に絞り(1次審査、通過率1%)、そこからまた確か10%程度の通過率で絞られ(2次審査)、3次審査を経て、グランプリが決まります。

ここで注目したいのが、協賛企業賞です。協賛企業賞は、お題を出した企業が、1次審査を通過したものの中から、良かったと思うコピーをひとつ選ぶというものです。ですので、実際のビジネスの現場なら、広告として実際に世に出る可能性があるのは、この協賛企業賞ということになります。

しかし、この協賛企業賞を受賞した作品で2次審査に通過したものがほとんどない。つまり、選球眼があるとされ審査員に選ばれた優秀なコピーライターが選んだコピー(=課題を実際に解決してくれそうなコピー)と、出題者である企業担当者が選んだコピーには乖離があったということです。

原因のひとつに、クライアントは自社の商品がよく言い当てられているコピーを選んでしまいがちで、それが必ずしも生活者にウケるコピーであるかはわからない…といったことがあると思われます。

(余談)僕は実際このコンペに応募して、1次審査に6本(700本ぐらい出した)通過、2次審査に2本通過したとこで終わりました。こうなると、「グランプリはまだしも、協賛企業賞ももらえなかった…でも、2本、協賛企業賞より倍率も高く、プロが選んでる2次には通った…いやでも落選は落選だし…ううん…モゴモゴ」とよくわからない気持ちになります笑。

(余談2)自分自身、2次に2本通った(1000分の1を2本通過した)のは結構嬉しかったですが、でも反面、やっぱり悔しかった。でも、悔しかったのは審査員への信頼があるからで、先の名古屋のコンペにそのような感情は絶対抱きません。

ちなみに、このことに関して、実に明快かつ説得力をもって、実際に審査員を務められた中村禎さんが書かれているので、ぜひ読んでみてください。

コピーを「選ぶチカラ」が必要なのは誰か? | AdverTimes(アドタイ)

 

■結論:広告はクライアントが9割

例がかなりくどかったですが、要は「この広告、本当にターゲットに利いてるのかなぁ…」と思ったり、「金にものを言わせた露出力任せな広告が多いな」と感じる理由は、僕は広告の依頼主、クライアントにあると思います。

僕は就活でいろんな方に話を聞いたり、半年間週2回、宣伝会議で何人ものコピーライターの方からコピーを学び、受講生の中で通算で一番「今週のよかったで賞」ももらえたし、それはなにより本気でやってたからでした。何が言いたいかというと、素人ながらも本気で考え、コピーと向き合ってきたということです。

そこで色々感じた結果、依頼主であり意思決定権を持つ事業会社のマーケターこそが、「効果が出ない広告」の諸悪の根源なのではと結論づけ、事業会社のマーケターという道を選びました。

もっと言うと、コピーに精通し、「広告を見る目」を持っているマーケターは強いぞと思ったのです。

自分の主観で好き嫌いを語るのは簡単ですが、できるだけ客観的な立場になって、この広告・コピーがターゲットに刺さるか考えられるのは、意識しないと(してても)なかなかできません。

まだ入社一ヶ月だし、いつ自分が決裁者になれるかはわからないし考えると途方に暮れるけど苦笑、自分なりに磨いてきた「広告を見る目」をもっと磨いて、この仮説が正しいことをいつか証明したいなぁと思うGWの中日です。

【ネタバレなし】ラ・ラ・ランドをこれから見る人にぜひ注目して見てほしい個人的ポイント8つ

このLA・LA・LAND(ラ・ラ・ランド)、僕は事前情報ほとんどなし(アカデミー賞で14部門でノミネートされてる+渡辺直美が躍り出すCMの印象のみ)で見に行ったんですけど、予告編を見て気持ちを高めてから見に行くと、なおのこと鑑賞後、感動に浸れると思います。

ネタバレはしたくないので、内容には触れず、淡々と「ここにもっと早く気付いて注目していれば…!」と思った点を並べます。

ただ、元々映画がかなり好きで、本当に本当に情報をゼロにして、自分でゼロから見たい!って人(たとえば、「監督がここにこだわった」「このシーン実は…」みたいな事実さえも知らない状態で見たい人)は、見ないほうがいいかと…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初から最後までの主人公の服装
※監督も、「コスチュームでの表現にこだわった」とインタビューで明かしている

②「最初の十数分は広告だから」と油断して、映画に遅刻することは絶対にしないこと
※見れば納得

カメラワークと編集(映像と映像の切り替わり)がすごい
※僕もズブの素人だけど、「す、すげげげえええ」てなる(撮影してるところを想像するとさらに「ほげげえええ」ってなる)

④音楽・構成・脚本も同上

LA LA LANDの辞書的意味は、以下の通り
〈米俗〉〔麻薬や酒に酔ったときに味わう〕陶酔境、恍惚、我を忘れた境地
 ◆La-La Landとも表記される。
〈米俗〉ハリウッド、ロサンゼルス◆ロサンゼルス全体を指すこともあるが、特にハリウッドについて使われる場合が多い。(英辞郎より)
〈筆者追加〉現実離れした世界、おとぎの国

デミアン・チャゼル監督は、今回のLA LA LANDの予算を獲得するための信用を得るために、段階的にまず低予算で前回の『セッション』を撮影し、「俺は映画が撮れるやつだ」と証明し、本作を撮った。

⑦同監督は青春時代、ジャズドラムに夢中だった

⑧この映画を見ると100人中168人がサントラを欲しがるが、現在Amazonでは在庫切れという事実にがっくりする。

 

たぶんもっとあるんだろうけど、見て気づいたり、見た後いろいろな人の感想や評価見て気づいた・感じた点はこれぐらいかな。

これを踏まえて、自分でももう一回見にいくか…!

なぜ職場に嫌な上司は生まれるのか

先週、バイト先の上司に怒られた。詳述はしないが、小さいミスを複数おかしてしまい、「こんなんじゃ就職したら死ぬ気で苦労するよ。要猛省」と言われた。

完全に自分のせいなので、言い訳する気もないし、本当に「その通り」なだけあって、心が苦くなったものの、反省しておかげで次はミスをおかさず済んだし、ここで陰口をたたくつもりなわけでもない。

何かというと、久しぶりに他人に怒られたな、と思った(※親は除く。うちの親は一日3暴言が日課だ)。と同時に、自分が人に最近怒った覚えもないな、とも思った。

また、社会人になると「上司に少し理不尽なこと言われたぐらいで、へこたれてちゃあやっていけないよ」と聞くけど(あくまで導入の例は、本エントリを思いついたきっかけであって、理不尽なことの例ではない)、学生時代に「先輩に少し理不尽なこと言われたぐらいで、へこたれてちゃあやっていけないよ」と言われたことはない(僕が体育会系の部活に所属したことがないからかもしれない)。なぜか。大学で「理不尽な言動をするやつ」は、すぐに村八分にされて、勝手に社会的に「排除」されるからだ。

これだ。だからここ最近、怒られた覚えがなかったのだ。

大学生同士で形成される組織・コミュニティーには、ある種の「神の見えざる手」が働いていると思う。資本主義社会において、優良企業が生き残り、そうでない会社が淘汰されていくように、大学生のコミュニティーでも、「理不尽なイヤなやつ」が淘汰され、「理不尽でない人たち」が生き残る。ただし、ここでいう「大学生のコミュニティー」とは、組織への加入・脱退障壁が低く、上下関係が色濃くない、いわゆる「サークル」のような組織を想定している。

企業ではどうか。僕は正社員として働いたことがないから全くの妄想になるけど、まわりから聞いた話をもとに推測すると、上司がたとえ理不尽だったりウザかったりしても、それが自然に淘汰される環境は、終身雇用を前提とし、クビや中途入社が活発でない多くの企業では存在しないのでは? と思う。

たとえば、クビ切りがいつでも行なえるような会社なら、部下に理不尽なことをする→チームのパフォーマンスがヘボくなる(or部下が人事に告げ口)→こいつ使えない→はいクビ、と健全に排除されるかもしれない。
※ただ、理不尽なのにデキる上司とかだと、チーム内の評判は悪いのに結果は出す→人事の評価〇→その人が組織内で重宝されていくという負のサイクルに向かう気もするし、そういう話は結構聞く

では、部下が声を上げればよいか? というと、声を上げるということは、そのリスクを背負うほどのメリットがないといけない。このとき非常に重要になるのが、本人が転職できる人間なのか、ということだと僕は思う。

まず若い(とくに第二新卒を過ぎたあたり)と、会社に対して資産特殊的投資(その会社でだけ役立つ能力への投資)をしている一方、汎用的なスキルが身についていない、ということが起こる。すると、転職ができない。たとえ部下が声を上げようとしても、上司はこの部下に多少理不尽なことをしても、退職できないことをわかっているから、つけこむことができる。いわゆる、ホールドアップ問題(※)だ。

(※)たとえば、あなたが大好きな彼氏・彼女に「髪型を波平カットにしてほしい」と頼まれ、実行したとする。相手はとても喜ぶが、他人ウケは最悪だ(パートナーに対し、資産特殊的な投資)。すると、あなたは波平カットになってしまった以上、他の人と付き合うことが難しくなる。そこでつけこまれる。「俺・私と別れたくないなら、その残りの1本も切ってよ」ーーこれがホールドアップ問題である。

人事に告げ口するぐらいなら簡単じゃ? と思うかもしれないが、告げ口して退職に追い込める会社なら健全。もし注意程度に終わったら、「なんであんなこと言ったんだ」or無言で干され、さようなら。こうも資産特殊的投資は怖い。詳述はしないが、清水富美加が「水着仕事をやらないと事務所に干される」と主張していたのも、事実だとしたらこのホールドアップ問題が原因だと思われる。

大学生の例に戻る。先ほど「組織への加入・脱退障壁が低く、上下関係が色濃くない、いわゆる『サークル』のような組織を想定している」と言ったが、組織に自由に出入りできると、「こいつウザいな」と思ったらすぐおさらばできるし、おさらばすることでその相手にもダメージを与えられることもあるかもしれない。上下関係がある組織は総じて、加入・脱退障壁が高い気もするが、そうでなくても、上下関係は多少の理不尽を「上下」を理由に押しつぶしてしまうパワーも持っている(むろん、上下関係型組織にもいいところはある)。

こう考えると、ウザい上司が社会に出るとはびこるのは、自分が会社(あるいは上司といってもいいかもしれない)に資産特殊的投資をするあまり、相手に「こいつに多少理不尽なことしてもOKだな」と、意識的・無意識に思わせてしまうからではないか。

※本エントリの趣旨とは異なるが、50過ぎのうっさいおっちゃん上司が発生する原因は、単に男性更年期障害(男性ホルモンが減ってイライラし始める)が原因なんじゃないかと、60すぎた父親を見て思う…

ということで、もし理不尽な上司に会った時の対策としての結論は、新卒で入社しても、いつでも転職できる汎用的な実力を頑張ってすぐにつけること…なんて言いたかったけど、どうせそんな甘くもないだろうから、入社して数年に当たる上司は結局、中小・ベンチャーでもない限り運ゲーなのだろう。4月になったら確かめてみるか。